明治大学文学部教授でトランスパーソナル学会会長の諸富先生に、一緒に死にたい気持ちについて語っていただきました。
死にたい気持ちをもつのは自分一人ではないし、
死にたい気持ちをもつからと恥ずかしい人間ではないし、
死にたい気持ちを話してもいいと思ってもらえたらという思いで、始めてみました。
そして、思いあがったことを言ってしまうかもしれませんが、
4万人もの人を死なせたくない。
ある予測では、2021年に4万7千人の自殺者がでることもあるように書かれていました。
コロナ騒動がある前の2019年の自殺者数は2万169人でした。
2万169人も勿論、十分に多すぎますが、このコロナ禍で、それがなければ死を選ばなかったであろう
人が亡くなることになるのだと思います。
本当に自分の人生を終わらせることが必要だと決めて自死することと、
解決策が死しかない、楽になるのは死しかない、と思って自死することは違うと思っています。
今、同じ時間を生きている誰かが、コロナ禍で、死ななければいけない、
それしか解決策がないと思っているのだとしたら、私にできることは何でしょうか?
私が景気対策に何かできるとは思いません。
今すぐ雇用を生み出せそうにもありません。
どこかの社長のように現金を配ることもできません。
データを出して理路整然と政策提言なんてとてもできません。
あるのは理路整然と話せることへの憧れだけです。
カウンセリングで私が会える人数は限られています。
死にたい気持ちを語る会で会える人数も。
演出家の宮本亞門さんが、若き日に自殺をしようと、睡眠薬を大量に薬局に買いに行ったら薬局の方が、
機転をきかせて、ビタミン剤を売ってくださったのだそうです。
宮本さんは、死ぬ覚悟をして、大量にビタミン剤を飲んで眠り、翌朝元気になったという話を以前、読んだことがあります。
もう死ぬしかないと思って、行動しようとしたけれど、なんらかのことが起きて、
たまたま生き残って、あーあのとき死ななくてよかった、って
偶然の何かなのか、誰かの助けなのかに感謝していきている人って、沢山いると思うのです。
ほんと、あのとき、死ななくてよかったーって。
もしかすると、誰かが、死にたい気持ちをもったことがあって、でもなんとか生き残ってて、今や生きる気満々でいて・・・
そんな話を聞くことが、誰かの死へ向かう行動を一度、止めて、時間を稼げるのではないかと思っています。
死にたいほどの思いをもっているときの、暗いトンネルの中なのか、深い沼の底なのかに
独りぼっちでいる孤独さや世の中への絶望を抱えたまま、
生きる気持ちをもつのはとても難しいことだと思います。
でも、ちょっとだけ目を開いて、周囲を見回してみてほしい。
本当に、もう、世の中には何も助けはないのでしょうか?
誰もあなたのことをいてもいなくても構わないと思っているのでしょうか。
あなたが死ぬか生きるかをとても気にしている人がいることに気づいてほしい。
人生には、あなたがまだ気づいていない、生きる意味があるのだと思う。
死にたい気持ちを語る会を始めるとき、色んなメッセージをいただく中で、少なくとも、
治療者という立場の人たちが、自分の患者さん達が亡くなってしまったことや、
自死を選びそうな患者さんに何もできなかったことを悔やみ、いつまでも忘れずに心の中で悼んでいることを知りました。
あー、自分が思っているよりも人は自分の事を大事に思ってくれているんだなと。
そう感じられないくらい、過酷な事があったのだと思います。
死にたくなるには十分な理由があると思います。
でもなんとか生き残ってほしいと思ってしまいます。
私にできることは、とても些細だから、一人でも誰かの行動を保留させ、もう一度考える時間、
目をひらいて周りを見渡す時間を稼げることなら、なんでも使ってやってみようと思っています。
目の前に死のうとしている人がいるのなら、そのために使えるのなら、
誰でも、桶でも虎の衣でも借りると思うのです。
あの日、宮本亞門さんに誰かがビタミン剤を売ってくれたから、
私は、宮本亞門さんの生き方に触れて感動することが今できる。
私もそんな薬局店員さんのような仕事がしたいのです。
いずれにしても誰だって、生きられる時間もまた、ほんの一瞬です。
動画をみていただいて、何か、あなた自身の人生の意味について考えてもらえたり、
人生は変えられるということについて、考える時間をもたらしたとすると、
それは私にとって、とても嬉しいことです。